アレルギーを専門とする医師の立場から言わせていただければ、汚部屋は「アレルギー疾患の培養槽」と言っても過言ではありません。喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、そして近年増加している化学物質過敏症。これらすべての症状を劇的に悪化させる要因が、汚部屋には凝縮されています。まず第一に、ハウスダストの量が尋常ではありません。掃除が全く行われない環境では、人間の皮膚片や髪の毛をエサにするチリダニが爆発的に増殖します。1グラムの埃の中に数千匹のダニが生息していることも珍しくありません。これらの死骸や糞が空気中に舞い、目や鼻の粘膜、あるいは気管支を刺激し、激しい炎症を引き起こします。アトピー性皮膚炎の患者さんの場合、不衛生な寝具に触れ続けることで、皮膚のバリア機能が崩壊し、ステロイド剤などの薬物療法を行っても全く効果が出ないという事態に陥ります。治療の基本は、まず「抗原(アレルゲン)の除去」ですが、汚部屋ではその基本が完全に無視されています。次に問題となるのは、不完全燃焼した古い暖房器具や、長年放置されたエアコンから吹き出すカビや化学物質です。これらが揮発性有機化合物(VOC)をまき散らし、目や喉の痛みを引き起こすだけでなく、化学物質過敏症を発症させる引き金になることもあります。アレルギーは一度発症すると完治が難しく、一生付き合っていかなければならない病気です。汚部屋という環境に身を置き続けることは、自ら進んでアレルギー体質を強化しているようなものです。特に子供がいる家庭での汚部屋は、子供の健やかな成長を著しく阻害し、将来にわたって健康被害を残すことになりかねません。アレルギー症状を改善したいのであれば、空気清浄機を買う前に、まず部屋のゴミを捨て、徹底的に拭き掃除をすることが先決です。薬はあくまで補助的なものであり、真の治療は清潔な環境から始まります。鼻水や皮膚の痒みが止まらないのは、あなたの身体がその環境に対して全力で拒絶反応を示しているからです。その警告を真摯に受け止め、健康を守るための環境整備を最優先に行ってください。