ゴミ屋敷の主というと、高齢者や無職の人というイメージを持ちがちですが、実際にはバリバリと働く二十代から三十代の、いわゆる「キャリア志向」の若者にも多く見られます。彼らがなぜゴミ屋敷を作ってしまうのか。その背景には、意外にも「完璧主義」という性格が潜んでいます。職場では完璧な仕事をし、身だしなみを整え、誰からも一目置かれる存在である。しかし、その高い緊張感を維持するために、脳の全エネルギーを外向的な活動に使い果たしてしまいます。その結果、自宅というプライベートな空間に帰った瞬間、バッテリーが完全に切れた状態になり、一歩も動けなくなるのです。コンビニ弁当の殻をゴミ箱に入れる、脱いだ服を洗濯機に入れる、といった日常の些細な維持活動が、過労状態の脳にとってはエベレストに登るような難事業に感じられます。一度片付けが滞ると、完璧主義ゆえに「完璧に元通りにできないなら、何もしない方がましだ」という極端な思考に陥り、さらにゴミが溜まっていきます。これを「全か無か」の思考と呼びますが、これがセルフネグレクトへの入り口となります。部屋が汚れていくことで自己嫌悪が募り、その恥ずかしさから友人を呼べなくなり、孤独が深まります。孤独になればなるほど、自分をケアする意味を見失い、さらに部屋が荒れるという負のスパイラルです。なんでこんなにだらしないのかと自分を責めれば責めるほど、脳はストレスを感じ、さらなる無気力へと追い込まれます。彼らにとって必要なのは、掃除のテクニックではなく、休息と「自分を甘やかす勇気」です。仕事のプレッシャーや社会的な期待から一時的に解放され、ボロボロになった心身を癒やす場所として、まずは部屋の機能を取り戻す必要があります。自分を粗末に扱うことは、自分の人生を諦めることに等しい。部屋のゴミは、自分自身を大切に扱えなくなった心の叫びです。専門の清掃業者を利用して一度リセットすることは、自分を大切にするという意思表示の第一歩となります。完璧でなくてもいい、少しずつでいい。そう思えるようになることが、ゴミ屋敷という名の心の廃墟から抜け出すための、最も重要な鍵となるのです。