部屋が散らかることは、単に整理整頓が苦手というだけでなく、住人の心の状態と深く関連していることが少なくありません。散らかった部屋は、時に心の混乱やストレスの表れであり、また逆に、散らかった部屋がさらなる心の不調を招く悪循環を生み出すこともあります。まず、ストレスや疲労が蓄積すると、人は物事を「後回し」にしがちになります。仕事や人間関係で疲弊していると、片付けという労力を要する作業に取り組む気力が湧かず、結果として部屋が散らかり放題になることがあります。この場合、部屋の乱れは、心身のSOSサインとして捉えることができます。また、自己肯定感の低さも、部屋が散らかる一因となり得ます。自分には価値がないと感じていると、自分の生活空間を大切にしようという意欲が湧きにくくなります。汚れた部屋に住むことで、さらに自己嫌悪に陥り、負のスパイラルに陥ってしまうこともあります。発達障害、特にADHD(注意欠陥・多動性障害)や自閉スペクトラム症(ASD)の特性が関係しているケースも少なくありません。ADHDの人は、注意の持続が難しく、衝動的に物を買ったり、片付けの途中で他のことに気が散ったりすることが多いため、物が増えやすく、整理整頓が困難です。ASDの人は、実行機能の困難から計画を立てて片付けるのが苦手であったり、特定の物への強いこだわりから物を捨てられなかったりすることがあります。これらの特性は、本人の努力だけでは解決が難しい、より深い問題として捉える必要があります。さらに、過去のトラウマや喪失体験が、物を溜め込む行動に繋がっていることもあります。例えば、大切な人を亡くした悲しみから、思い出の品を手放せない、あるいは喪失感を埋めるために物を買い集めてしまうといった心理が働くことがあります。物は、時にその人にとっての安心感や心の安定剤のような役割を果たすことがあります。散らかった部屋は、住人の内面が抱える問題の鏡であるとも言えるでしょう。このため、部屋を片付けることは、単に物理的な空間を整理するだけでなく、自分自身の心と向き合い、内面を整理するプロセスでもあります。部屋をきれいに保つことで、心の状態も安定し、自己肯定感が高まるという良い循環を生み出すことができます。
散らかる部屋と心の関係