保健師として、長年多くの新生児家庭を訪問してきました。その中で、多くの新米ママやパパが、部屋の乱れを気にしていることを肌で感じています。「すみません、散らかっていて」「片付けられなくて申し訳ありません」といった言葉を、どれだけ耳にしてきたことでしょう。しかし、私たち保健師が新生児訪問で本当に見ているのは、部屋のきれいさではありません。部屋が散らかっているからといって、それで親を非難したり、何かを判断したりすることは決してありません。私たちの訪問の真意は、大きく分けて二つあります。一つは「赤ちゃんの健やかな成長の確認」です。体重の増え方、授乳やミルクの飲み具合、おむつの状態、体の発達や反応など、赤ちゃんが順調に育っているかを確認します。何か気がかりな点があれば、早期に発見し、適切な医療機関や専門機関へと繋げる役割も担っています。もう一つは「お母さん、お父さんの心身の健康と育児状況の把握」です。産後の母親の体調はどうか、精神的に安定しているか、育児に対する不安やストレスを抱えていないか、睡眠は取れているか、といった点に最も注意を払っています。育児は喜びであると同時に、大きな負担も伴うものです。特に産後はホルモンバランスの変動もあり、情緒不安定になりやすい時期です。私たちは、ご両親が孤独を感じていないか、誰かに頼れているか、笑顔で赤ちゃんに接しているかといった、親子の関わりや親自身の様子を観察しています。部屋が多少散らかっていても、赤ちゃんが安全に寝られる場所があり、清潔な衣類が使われているなど、最低限の環境が整っていれば問題はありません。もし、部屋が極端に散らかっていて、それが育児にも影響を及ぼしているようであれば、それは親からの「助けてほしい」というメッセージと受け止めます。そのような場合は、片付け支援サービスや、育児支援サービス、あるいは精神的なサポートが必要なケースとして、最適な支援へと繋げるための情報提供や調整を行います。私たちは、親を評価したり、批判したりするために訪問しているわけではありません。地域の子育て家庭が、安心して、そして楽しく育児ができるように、寄り添い、共に考える存在でありたいと願っています。だから、部屋のことは気にせず、遠慮なく私たちに頼ってほしいのです。
保健師が語る新生児訪問の真意